タイ骨董日記

私、自称仏像コレクターよる東南アジア初期のヒンドゥー・仏教美術、タイのお守りプラクルアン情報。SINCE Feb2006 (C) 2006 タイ骨董日記

シュリーヴィジャヤ期の塼仏(トラン出土)その10

写真はタイ南部トラン出土のシュリーヴィジャヤ期(8〜9世紀頃)の塼仏です。出土時以前から割れた状態の残欠ですが、残っている部分の状態はかなり良いものです。特注のステンレスケースが仕上がり収めました。

証明下で撮影したものです。

次にタイ プーケット県のタラン国立博物館に展示されている同出土地の同型の塼仏です。

この2点を並べて比較したのが下の写真です。

同型の塼仏ということは分かると思いますが、状態も博物館の展示品にかなり近いことが分かります。おそらくこの2点は同時に発掘されたものではないかと思っています。ヤフオクに出品しました。https://auctions.yahoo.co.jp/seller/k9271

ステンレスケースに入れる前の写真を追加しておきます。

The Roots of Thai Art

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ドヴァーラヴァティー期の塼仏(ナードゥン出土)文献掲載の型

マハーサラカム県ナードゥン出土の塼仏残欠を文献に掲載されている同型と並べて写真を撮りました。ドヴァーラヴァティー期、9世紀頃のものです。文献に掲載されている塼仏はコンケン国立博物館のコレクションです。1枚目は倚像の塼仏です。中国の初唐、日本の飛鳥時代後期(白鳳時代)にも似た美術様式のものがあります。

2枚目は腰をくねらせた立像の塼仏です。東南アジア初期の美術に見られる様式です。腰のくねりはもともとはグプタ朝やパーラ朝から伝来してきた美術ではないかと思います。

3枚目は座像の塼仏です。

写真2枚目と3枚目は1987年に東京国立博物館で開催されたタイ美術展(日タイ修好100周年記念)の時に同型塼仏が展示されていましたので参考に図録の写真とその説明文を貼り付けておきます。

最後は小さな仏像が並んだ塼仏です。蓮の花に鎮座した仏像と仏塔や植物も並んでいます。高さ15センチ強とかなり大きなもので残欠片でもかなり迫力があります。

下がこれらの塼仏が掲載されている文献(英文)です。ドヴァーラヴァティー王国やシュリーヴィジャヤ王国時代のタイ初期の発掘品の写真がたくさん掲載されているおすすめの文献です。リンクを貼り付けておきます。

追記:もう1点、ナードゥン出土の座像の塼仏とタイの文献に掲載されている同型を並べてたものです。菩提樹の下で瞑想する仏陀です。両脇には仏塔がデザインされています。

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ランナー期の木製仏

久しぶりにランナー期の木製仏を購入しました。

左側はおそらくプラ・ブアケム、右側はランナー仏。ブアケムは中型サイズで頭部の形状や子供のような顔立ち等、今まで見たことのない珍しいタイプのものです。ブアケムはミャンマーのシャン州やタイ北部のランナー圏で見られる仏像の一種ですが、これはラオスの木製仏のような素朴な雰囲気を感じ、聞くとラオスに隣接するナーン県から来たものだと言う。なるほどと思いました。

右側も素朴なお顔と肘を曲げた姿勢等の庶民仏的な雰囲気が気に入り購入しました。仏像全体にチャートと呼ばれる朱色の塗料が施され、その上から銀色の塗料が塗られている。この銀色の塗料は後から塗られたようですがタイやタイ北部ではあまり塗らない色の塗料で、顔や耳の形状など少しラオス仏のような雰囲気を感じました。ただし台座部分には(銀色の塗料で半分以上見えなくなっているが)ランナー文字が刻まれており、ランナー文化圏で作られたことは間違いないようです。ナーンかパヤオ辺りのものかもしれません。2点とも同日にチェンマイで入手したもので、色も金と銀で縁起が良いので一緒に飾ろうと思っています。年代は19世紀頃のものだと思います。

写真追加(2024年1月29日)この横から見た姿(姿勢)がブアケムの魅力のひとつです。

毘沙門天(多聞天)の古代コイン

小さなコインの残欠です。材質は銀や鉛等の金属製です。コイン表側は英名でクベーラ、タイ語ではターウクェーンと呼ばれるヒンドゥー神がデザインされています。おそらく日本の毘沙門天(多聞天)にあたると思います。

写真2枚目はタイ中部出土のテラコッタ製せん仏(印章)ですが同じくターウクェーンがデザインされています。

ターウクェーンは「富と財宝の神」でインドから伝わった東南アジア初期の美術に見られるものです。豊かさを象徴し、裏側には法螺貝がデザインされています。このコイン残欠もほぼ同時期(ドヴァーラヴァティー期 8世紀前後)のものだと思います。関連する以前の記事を貼り付けておきます。https://thaikottou.hatenablog.com/entry/2021/12/19/000104

 

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ナーガ仏のお守り ワット・クワンカムルー寺(プレー県)

久しぶりにプラクルアンの記事を書きます。写真はタイ北部プレー県 ワット・クワンカムルー寺で発行されたナーガ仏のお守りです。高僧クバー・ゲーウらによって約48年前の仏暦2518年12月19日にワット・クワンカムルー寺で入念儀式され翌年仏暦2519年3月9日に発行されたものです。このお守りはハヌマーンのお守りと同時に発行されたもので文献にも掲載されています(写真2枚目)

見ての通り小さなお守りです。材質はナワ製。下の写真は文献のものと並べて比較してみたものです。

以前、ハヌマーンのお守りだけ入手しましたが、このナーガ仏が揃ったことで1組のセットが出来ました。

高僧クバー・ゲーウについては以前の記事を貼り付けておきます。https://thaikottou.hatenablog.com/entry/2018/05/21/155959

またハヌマーンのお守りの以前の記事はこちらです。参考にして下さい。https://thaikottou.hatenablog.com/entry/2020/12/19/000927

メコンの絶景(タイ北部チェンコーン)

今週日曜日に久しぶりにチェンコーン(チェンラーイ県)行って来ましたので写真をアップしておきます。相変わらず垢抜けない田舎街ですが、タイ北部でメコン川を眺めるにはここがベストだと思います。写真1〜5枚目はチェンコーン市内からチェンセーン方向へ9キロほど行った山の上の寺院ワット・テープ ニミット(建設中)から見下ろしたメコン川の風景です。対岸(メコン左側)はラオスのフアイサーイです。午前中は逆光ですが夕方前はこのように素晴らしい景色が見れます。

この後、チェンコーン市内に戻るとメインストリートにあるワット・プラケーオ(チェンコーン)では夕方の読経が始まっていました(写真6〜8枚目)。ここはかつて、現在タイ王宮に安置されているエメラルド仏(プラ・ケーオモーラコット)が一時期置かれていたところで本堂入口の上にはタイ王室の紋章があり、現在もエメラルド仏(レプリカ)が祀られています。

ホテルが並ぶツーリストエリアから見る夕方のメコンも素晴らしいです。対岸のフアイサーイの町が見えます。

もう1ヶ所、メインストリートにあるワット・ルアンの本堂にはチェンセン時代の仏像が祀られいますが、それ以外にも敷地内の小さな祠にはプラ・サンカチャーイ仏が祀られています。年代ははっきり分かりませんでしたがかなり古いもので18〜19世紀頃か、もっと古いかもしれません。

2024年 骨董始め 龍神ナーガ

カンボジアの機織りの道具です。2024年の干支「辰年」にちなんで龍神(ナーガ)を集めて掲載します。東南アジアでは龍神(ナーガ)はとても人気があり、守り神として寺院の装飾のみならずこのように庶民が使う道具(木工美術品)にまで彫刻され大事にされてきました。最後の写真5枚はカンボジア国立博物館(プノンペン)に展示されているほぼ同時期(19世紀〜20世紀初め)のものです。参考まで。タイ骨董日記は今年から「はてなブログ」でがんばっていきます。よろしくお願い致します。

メコンデルタの街 チャウドック(アンザン省)

アンザン省のクメール族の村を訪ねた際、旅の起点にした街チャウドックを紹介します。ここはベトナム人にとって聖地のような場所です。チャウドック中心地から西へ5キロほど離れた場所にあるサム山には多くのベトナム寺院が点在しています。山頂からはメコンデルタ平原やカンボジアの国土を一望することができ、早朝からたくさんのベトナム人が巡礼(観光)に来ていました。クメール族の村を訪ねた翌日はまずこれらの観光地を見てまわりました。その後もう1ヶ所、どうしても確認しておきたかった場所に移動しました。それが最後の写真です。ここはチャウドック市街地から24キロほど北上したアンザン省北部、扶南国の都があったといわれるカンボジア南部 アンコール・ボレイにベトナム側から最も近い(下に貼り付けた地図の印をつけた)位置です。この場所からプノン・ダ寺院(地図上のハートマーク)まで直線距離10キロ弱ほどで、川の名前もまだアンコールボレイ川となっています。写真奥に川が2つに別れる地点が見えますが(地図の通り)左側奥からはカンボジアです。今から1400〜1500年前にこの川が扶南国の人々によって使われていたはずです。次回はカンボジア側からアクセスしたいと思っています。来年もよろしくお願いいたします。

クメール族の村(アンザン省)

先月メコンデルタの街、チャウドック(アンザン省)に行って来ました。翌朝ホテルでバイクを借りてクメール族の村を訪ねました。チャウドックはカンボジア南部国境に接するベトナム側の街ですが、街からかなり離れたアンザン省の内部には多くのクメール様式の寺院が点在しており、周辺はクメール民族が住んでいます。その日は天気が良く、また期待していたとおり雰囲気の良い所で素晴らしい写真が撮れました。このブログのヘッダー画像もここで撮影したものです。

ドンダップ省博物館(オケオ文化 )

先週、ドンダップ省博物館に行って来ました。昨年8月以来、2度目。今回は記事にしておきます。ドンダップ省はカンボジア南部に接しており、省の北側から南側にメコン川が流れています。博物館は省都カオラインにあります。ここに展示されている大型のヴィシュヌ神像(石像、写真3枚目)はドンダップ省東部で1998年に発掘されたものてベトナムの国宝に指定されています。写真4枚目のヴィシュヌ神像も国宝です。写真10枚目からはコレクションのヴィシュヌ神像(右側)と比較をして見たものです。顔の表情は異なりますがふっくらとした頬や顎の輪郭や、胸部から腰までの身体のライン(スタイル)がよく似ています。ドンダップ省博物館に展示されている3体のヴィシュヌ神像はカンボジアのアンコールボレイ様式(プレアンコール期)の影響を強く受けているように思えました。扶南(オケオ文化)というよりは真臘(チェンラ)に近い印象です。来年カンボジアの博物館で再度良く勉強してきたいと思っています。
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Arts of Ancient Viet Nam: From River Plain to Open Sea (Museum of Fine Arts)

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  • 出版社/メーカー: Museum of Fine Arts Houston
  • 発売日: 2009/03/24
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