ウートン期の青銅仏は(初期、中期、末期の)3期に分類されますが中期と末期(アユタヤ初期)の違いはなかなか微妙な部分があるので、並べて比較してみました。
写真1、2枚目は文献に掲載されている坐像で1枚目はウートン中期(14〜15世紀)、2枚目はアユタヤ初期(15世紀)のものです。今回はこの2体の比較がいちばんの目的ですが、
かなり以前にカンボジアのポスト・バイヨン期(15〜16世紀)のものとして入手した自分のコレクション(写真3枚目)を含めたら3点を並べて比較してみました。
カンボジアのポスト・バイヨン期(14〜16世紀)はタイのウートン期とほぼ同時期のもので美術様式もかなり近いものです。
ではまず最初に頭部の比較です。
右側のポスト・バイヨン期のものはバイヨン期からのクメール美術を引き継いでおり顔つきの違いはありますが、3点とも同系の美術に見えます。真ん中(アユタヤ初期)の頭部の形状は左側(ウートン中期)と比べて面長になってきています。しかしまだウートン様式(後期)の影響がよく残っています。右側のポスト・バイヨン期(15〜16世紀)のものも左側(ウートン中期)に比べ面長な形状になっています。
次に全体のバランスですが、左(ウートン中期)の胸部は他に比べてフラット気味で座高が高く、膝幅は短めです。これは高い座高に合わせ全体のバランスを保つ為だと思います。中央のアユタヤ初期になると座高は(ウートン中期に比べて)短くなり、膝幅が広くなっています。右側のポスト・バイヨン期ものも真ん中(アユタヤ初期)の体型(バランス)に近いように見えます。この比較では右のポスト・バイヨンの立像の年代はアユタヤ初期15世紀以降のもので、当初の理解通り15〜16世紀で正しと思います。ウートン中期〜下期の立像を比較した以前の記事のリンクを貼り付けておきます。https://thaikottou.hatenablog.com/entry/2020/10/18/000613
またウートン後期〜末期(アユタヤ初期)の青銅仏頭部残欠について書いた記事はこちらです。参考まで。https://thaikottou.hatenablog.com/entry/2022/08/13/000909
The Sacred Sculpture of Thailand: The Alexander B. Griswold Collection, the Walters Art Gallery
- 出版社/メーカー: Univ of Washington Pr
- 発売日: 1997/12/01
- メディア: ハードカバー