ちょっと鮮明な写真が手に入ったのでまた比較してみました。写真1枚目はコレクションのハリプンチャイ時代(初期〜中期頃)の仏像頭部(テラコッタ製)です。なぜ初期〜中期頃と言えるのかを今から説明してみます。写真2枚目がスパンブリー県ウートン国立博物館に展示されているドヴァーラヴァティー時代8世紀頃の大型の仏碑(テラコッタ製)ですが、写真3枚目以降はこの2点の顔部分を比較したものです。見て分かる通り2点の美術様式がかなり共通しています。ドヴァーラヴァティー美術様式(6〜11世紀)はモン族によるタイ最初の仏教美術で、ハリプンチャイ美術(8〜13世紀)は同じモン族が北上しランプーン(ハリプンチャイ)に都をおいた時に生まれた美術です。よってハリプンチャイ時代初期の美術はドヴァーラヴァティー美術の影響を強く受けています。ただ写真1枚目の仏像の頭上部の形状や螺髪の大きさが小さくなってきていることから恐らく10世紀頃に作られたものだと思ってます。ちなみにハリプンチャイ中期頃はインドのパーラ美術やミャンマーのパガン美術の影響を受け、また後期の12〜13世紀頃にはロッブリー美術(クメール美術)の影響を受けてきます。
Lost Kingdoms: Hindu-Buddhist Sculpture of Early Southeast Asia
- 作者: John Guy
- 出版社/メーカー: Metropolitan Museum of Art
- 発売日: 2014/05/06
- メディア: ハードカバー