写真右側の青銅立像は20数年前にポスト・バイヨン期(15〜16世紀)のものとして手に入れたものです。カンボジアのポスト・バイヨン期(14〜16世紀)はタイのウートン期(アユタヤ初期)のものとほぼ同時期のもので美術様式にも共通点が多いですが制作された時期が短く数は多くありません。ちょうど古い文献で同時代の特集があり立像、倚像の写真を見つけたので今回比較してみました。写真1、2枚目左側はウートン中期の立像(14世紀中期〜15世紀)、写真3枚目左側はウートン中〜後期の倚像(15世紀)、とても珍しいものです。写真1、2枚目左側はまだクメール(バイヨン)美術の影響をかなり残しているのが分かります。写真3枚目の倚像(左側)はウートン後期に移り変わる頃のもので頭部の形状が卵形に変わってきており、肩幅が広くなっているのはスコータイ美術の影響だと思います。年代的には15世紀中ばぐらいのものでしょうか。写真4枚目は3枚目の上半身を拡大したものですが左側の倚像の顔つき(バランス)等も右側の立像に似てきているのが分かります。これらのことからも右の立像の年代は購入当初の説明通り15世紀末〜16世紀前半ごろで妥当だと思っています。
<追記>2022年7月15日 先日バンコク国立博物館に行った時に見たプレ・アユタヤ様式の坐像と立像を掲載します(写真1〜3枚目)。ロッブリー美術からアユタヤ初期(ウートン美術)に移行する直前のロッブリー美術末期(14世紀頃)のものです。写真4、5枚目はポストバイヨン期(15〜16世紀)と比較したものです。体の体格(ライン)や足、丸い台座など造りがよく似ていることが分かります。参考まで。
The Sacred Sculpture of Thailand: The Alexander B. Griswold Collection, the Walters Art Gallery
- 出版社/メーカー: Univ of Washington Pr
- 発売日: 1997/12/01
- メディア: ハードカバー