先日、奈良に飛鳥時代(西暦592年〜710年)の仏像と塼仏を見に行って来ました。写真1枚目は奈良国立博物館(仏像館地下)の掲示の一部ですが飛鳥時代前期と後期(白鳳時代)の仏像の特徴について分かりやすく説明されているので紹介しておきます。日本で最初に仏像や塼仏が作られた飛鳥時代は前期(6世記末〜7世紀中頃)と後期(白鳳時代、7世紀後半〜8世記初め)に分けることが出来ます。前期は「面ながでアーモンド形の目とアルカイックスマイルを浮かべた神秘的な表情をしている」、後期(白鳳時代)は「子どものような可愛らしい顔立ち」と書かれています。写真2枚目は飛鳥寺で撮ってきた飛鳥大仏(西暦609年)で前期のものです。写真3、4枚目は飛鳥資料館に展示されている山田寺の仏頭(白鳳時代、西暦685年)の複製(オリジナルは興福寺 国宝館)で、記述には「明るい表情、童顔、大きな弧をえがく眉、切長の目などは、初唐の影響を受けた初期の白鳳仏の特色である。」と書かれています。こちらは後期(白鳳時代)のものです。写真の通り、前期も後期も博物館の記述通りの特徴をもっているのが分かります。次の写真5枚目も飛鳥資料館に展示されている川原寺裏山遺跡出土の三尊像塼仏(7世紀)です。こちらは飛鳥時代後期(白鳳美術)の顔立ちをしています。写真6枚目はこの塼仏とタイのドヴァーラヴァティー期青銅仏(写真7、8枚目)の頭部を比較してみたものですが「子供のような顔立ち」、「切長の目」等、頭部の輪郭、表情も似ていると思います。この事からこのドヴァーラヴァティー期青銅仏の年代は白鳳時代と同時期(7世紀後半〜8世記初め)ではないかと思っています。理由は白鳳時代の塼仏同様に初唐(7〜8世紀初め)の影響を受けているからです。当時、外国からの仏教伝来と共に美術においてもかなり強い影響を受けたのだと思います。先日の記事リンクも貼り付けておきます。https://thaiart.blog.ss-blog.jp/2020-11-01
<追記>2021年3月21日 先日、大阪市立美術館に行ってきました。展示はされていませんでしたがここにコレクションされている中国 北魏(386年~534年)の石仏と比較してみた写真を追加しておきます。顔の表情やバランスが似ており、このドヴァーラヴァティー青銅仏は北伝ルートの仏教美術の影響を受けたように見えます。また北斉(550年~577年)の石仏についても同様のことが言えました。
<追記>2021年10月31日 先日、久しぶりに東京国立博物館に行ってきました。東洋館ではちょうどイスラーム美術の展示会をやっていたので東南アジアの展示は少なかったですが、その代わり法隆寺宝物館でじっくりと飛鳥時代の金銅仏を拝んで来ました。下の写真はその中の1点の菩薩像ですが、いつものようにタイのドヴァーラヴァティー仏と比較して見たところ、顔の特徴(バランス)がよく似ていましたので参考に掲載しておきます。
Lost Kingdoms: Hindu-Buddhist Sculpture of Early Southeast Asia (Metropolitan Museum of Art Series)
- 作者: Guy, John
- 出版社/メーカー: Metropolitan Museum of Art
- 発売日: 2014/05/06
- メディア: ハードカバー