タイ南部の記事はまだ途中ですが、ここで入手したばかりのシュリーヴィジャヤ期の塼仏(写真1、2枚目)を記事にします。完品であれば中央仏陀像の周りを8体の菩薩像が囲んでいる曼荼羅の構図に近い塼仏です。裏面には古代文字 Ye Dharmaの印章が押されています。このような印章が手押しされた塼仏は類例がほとんどなく、繊細な美術様式から見てもかなり重要な工房か場所で正式に発行されたものだと思います。写真3、4枚目は今月初めに行ってきたナコーンシータマラート国立博物館に展示されている同型の塼仏(ほぼ完品)とその記述です。さらにその下、写真5、6枚目はこれらの裏表面を比較してみたものです。見ての通り全く同型の塼仏で裏面の手押し5ヶ所の印章を見てもほぼ同時に同金型で作成されたものに見えます。材質も同じ、焼成工程のない土製です。記述には出土地の記載はありませんでしたがナコーンシータマラート県、もしくは周辺のスラータニー県、パッタルン県、トラン県出土のもの、年代は9世紀ごろのものです。その下の写真はシュリーヴィジャヤ期(8世紀後半〜9世紀)の青銅仏(バンコク国立博物館蔵)ですが仏陀像の姿勢や印相(説法印)また光背の形状等、美術様式が塼仏とよく似ています。ともあれ今回博物館でこの型の塼仏を直に確認した直後、即連絡をとり無事この塼仏を入手することが出来た訳です。
<追記>2021年11月6日 バンコク国立博物館の改装がかなり進み展示がかなり良くなっていますね。是非近いうちには行きたいと思っています。ところでこの記事の同型の塼仏も提示されており下に写真を追加しておきました。最後の写真2枚は真ん中のものとの比較ですがもちろん同型と分かります。参考まで。
Lost Kingdoms: Hindu-Buddhist Sculpture of Early Southeast Asia
- 作者: Guy, John
- 出版社/メーカー: Metropolitan Museum of Art
- 発売日: 2014/05/06
- メディア: ハードカバー