タイ骨董日記

私、自称仏像コレクターよる東南アジア初期のヒンドゥー・仏教美術、タイのお守りプラクルアン情報。SINCE Feb2006 (C) 2006 タイ骨董日記

東南アジア初期の美術 西側の影響

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タイのドヴァーラヴァティー期、カンボジアのプレアンコール期等、東南アジア最初期の仏像やヒンズー神像の彫刻には源流に近いインドのグプタ美術やアマラーヴァティー美術などの影響が見られ、それが初期の像の魅力の一つと言っていいと思います。写真はチャンパ初期(ベトナム南部)のものとしてかなり以前に入手したテラコッタ製の頭部で2年ほど前に訪れたベトナム南部オケオ周辺の博物館の展示物からおおよその出土地や年代を知ることが出来ました。しかし周辺の出土品と比較してもこの個性的な顔立ちの由来は説明出来ません。先日、オリエント美術の文献を眺めていたところ(他人のコレクションなので掲載出来ませんが)インド・グプタ朝とほぼ同時期のササン朝ペルシア(現代のイラン周辺)の出土品に似た顔付きのものがありました。ベトナム南部等、インドシナ半島沿岸部は6世紀以前からインドやさらに西側と東西の交易があり沿岸部に近いポイントでローマ帝国時代の硬貨が古代ビーズと共に出土しています。もしかしたらこのテラコッタ製頭部もインドよりさらに西側(西アジア)の美術の影響を受けたものかも知れません。異国的で不思議な魅力がある頭部で気に入っており、今後も追究をしていくつもりです。この頭部とベトナム南部の博物館蔵品を比較してみた過去の記事を貼り付けておきます。https://thaiart.blog.ss-blog.jp/2019-06-24

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<追記>2021年7月22日 タイ人コレクターから参考になる意見が聞けました。それは「テラコッタ製の頭部上部の三角に尖ったものは宝冠のように見えるので、そうであればおそらくこの頭部はプレアンコール期の神(菩薩)だろう」。追加写真2枚目は文献に掲載されている青銅製の神像(タイ ブリラム県プラコーンチャイ出土、8世紀)でフィラデルフィア美術館のコレクションです。この像の頭部の宝冠はテラコッタ製頭部に似た三角の形状をしています。かなり昔の記憶ですがこの三角状の宝冠はもともとチャンパ(チャム)特有の美術様式だったと思います。よってプラコーンチャイ出土の青銅神像は逆にチャム美術の影響を受けたものだと思います。以上のことから(ベトナム南部出土の)このテラコッタ製頭部の宝冠部が三角状をしているのはチャム美術本来の美術様式と言っていいと思います。参考まで。
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<追記>2021年11月5日 当時「チャンパ初期」のものとして入手しましたが正しくは「扶南」のものです。
Lost Kingdoms: Hindu-Buddhist Sculpture of Early Southeast Asia (Metropolitan Museum of Art Series)

Lost Kingdoms: Hindu-Buddhist Sculpture of Early Southeast Asia (Metropolitan Museum of Art Series)

  • 作者: Guy, John
  • 出版社/メーカー: Metropolitan Museum of Art
  • 発売日: 2014/05/06
  • メディア: ハードカバー