タイ骨董日記

私、自称仏像コレクターよる東南アジア初期のヒンドゥー・仏教美術、タイのお守りプラクルアン情報。SINCE Feb2006 (C) 2006 タイ骨董日記

仏像の目で年代が分かる(その5)

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今回は写真右側の仏像の年代を文献と比較しておおよそ特定して見ました。ポイントは「仏像の目」ではないですが、関連する内容なのでこのシリーズの続きの記事にしました。この仏像はドヴァーラヴァティー期のもので高さ約8センチ、ソリッドの重いブロンズ製です。目もとの彫が深くない為、目の形状がはっきりとは確認出来ないですが頭部の形状や体型が近いもの(写真上左側の青銅仏)が文献にありました。記載ではタイ中部スパンブリー県ウートン郡出土とあり、年代は6世紀後半となっています。座り方が珍しい倚像(いぞう)でドヴァーラヴァティー期初期に稀に見られるインド美術(グプタ美術)の影響を受けたものです。ドヴァーラヴァティー期の石像やテラコッタ製の塼仏にはこの座り方の仏像はありますが、青銅製では数少ない作品のひとつです。この2点の仏像の上半身部分のアップを比較したのが写真2枚目です。見て分かるように体格や体型がかなり近いです。顔つきは異なりますが、頭部の形状も良く似ています。次の写真は石像頭部(写真3枚目左側)です。文献にはベトナム南部(メコンデルタ)で出土したのもであろうと記載されており、年代は5〜6世紀。現在はパリの有名な美術館にあるものです。これはインド美術の影響を強く受けた東南アジア最初期の作品と言われているものですが、(3枚目右側の)比較対象仏の頭部と比較するとふっくらとした頬から顎にかけての輪郭や童顔な顔つき、口元、鼻や耳の形状等、共通する点が多く、右側の仏像も同様にインド美術の影響を受けた顔つきと言えると思います。ただ頭部の螺髪の大きさなどは違いがあります。ここまでの比較では対象仏の年代はおおよそ6世紀〜7世紀ぐらいだと思いますが、あと一、二例ほど比較できる例が文献にあればだいたいの出土地や年代も100年間隔レベルまで特定出来るのではと思います。
Lost Kingdoms: Hindu-Buddhist Sculpture of Early Southeast Asia

Lost Kingdoms: Hindu-Buddhist Sculpture of Early Southeast Asia

  • 作者: John Guy
  • 出版社/メーカー: Metropolitan Museum of Art
  • 発売日: 2014/05/06
  • メディア: ハードカバー